PUNISUKEのブログ

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ラドリオについて

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神保町の古本屋街の一角。狭い路地にひっそりと佇む、今にも崩れそうな家の一階にある喫茶店「ラドリオ」。ここは僕が大学時代に友人と毎日通った喫茶店だ。

 

初めてラドリオに行った時の記憶はない。けれど、大学時代の大半はラドリオで過ごした印象がある。隣の人と肩がぶつかるくらい窮屈に並べられた赤い皮のソファーに座り、多い時には1日2~3回そこでコーヒーを飲んでいた。ちょっと背の高い人が背伸びをしたら頭がついてしまうくらい低い天井や、震度4程度の地震でも潰れてしまいそうな建物は、そのあまりの古さゆえ、逆に安心感を与えてくれる。

 

コーヒーは一杯460円。店内は全席喫煙可で、今時では珍しく店のロゴがプリントされたマッチが置かれている。客層は昔からの常連や、大学生、カップルなど幅広く、店員は「どうぞいつまででもいてください」と言わんばかりで、長居のしやすい雰囲気がある。そんな雰囲気のおかげで、僕は4時間でも5時間でもラドリオにいることがしょっちゅうだった。

 

ラドリオへの愛を語るときりがない。たまに好きすぎて、僕は性的異常者でラドリオという建物に本当の恋をしているのかと思う時さえある。そんな僕が、今年の春、ラドリオと別れなければいけない状況に陥った。

 

今年の春、僕は就職で地元九州に帰ることになった。友人と離れることももちろん寂しかったが、何よりラドリオに行けなくなることが不安でしかなかった。一人の時、友人と遊ぶ時、彼女と別れる前、彼女と別れた後、いつも僕はラドリオにいた。ラドリオは僕と一緒にいてくれた。そんな相手と離れるのがこの上なく寂しかったし、不安だった。僕はせめてもの癒しとして、ラドリオに置いてあるマッチを持って行った。けれど僕は当時元カノからもらったZIPPOのライターを持っていて、空港の持ち物検査でライター・マッチは1つまでと言われてしまった。元カノを取るか、ラドリオを取るか…僕は迷わずラドリオを選んだ。そうして僕はラドリオの香りを側に感じながら、九州での新生活をスタートさせた。

 

けれどやっぱりラドリオがない日々は退屈だった。僕は毎日ラドリオの代わりを探した。似たような店はいくつもあったが、ラドリオと比べるとどうしても何かが足りなかった。そうして町中の喫茶店を周りきったころ、僕はついに気づいてしまった。本当に大切な存在に、代わりなんてないということに。そして、そんな存在と離れてしまった自分の決断を本当に後悔した。

 

今月、僕はラドリオと一緒に暮らすため仕事を辞めた。そしてまた来月から、東京に戻ってラドリオと共に生活を始める。この半年間、紆余曲折あったけど、もう迷うことはないだろう。これから先の僕の人生は常にラドリオと共にある。ラドリオ、いつまでも一緒だよ。