PUNISUKEのブログ

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人生を変えた一曲~スガシカオ「サヨナラホームラン」について

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僕は小さい頃から苦手なことがなかった。3歳から始めたピアノは九州大会で入選したし、小学生で始めた野球もエースとして九州大会ベスト8になった。絵を描けば元総理大臣から賞をもらったし、全くしていなかった勉強も学年では常に10番以内だった。簡単にいえば、田舎のエリート。また言い換えれば井の中の蛙。まさしく大海を知らないまま、すくすく傲慢になっていった。

 

伸びきった僕の鼻をへし折ったのは2013年の大学受験。2月には受験した学部に全落ちし、これ以上なくスマートに浪人が決まった。当時受験に関して情報強者だと自負していた僕は、地元の浪人生が通う北九州予備校を自ら願い下げ、一人暮らしで河合塾へ通うことにした。そして3月には福岡へ引っ越し、浪人生活をスタートさせた。

 

予備校通いが始まると色んな塾生が目についた。入学早々カップルになり、ラウンジでいちゃつく生徒。コンビニ前で堂々と煙草を吸う、明らかに20代中盤の生徒。大学生に置いて行かれまいと、髪をこれでもかとブリーチする生徒。そんな生徒たちを見ていて、「俺はこんな奴らとは違うぞ」と必死に自分を言い聞かせた。言い聞かせないと、自分もそっちに流れていきそうで怖かった。

 

3か月後、僕は髪を染め予備校にもろくに行かなくなっていた。昼過ぎに起きて、カーテンは閉め切ったままぼうっとテレビを見ながら怠惰な生活を送っていた。SNSから流れてくる同級生の煌びやかな大学生活に嫉妬して、「本当はこんなはずじゃなった。俺も本来こっち側の人間だ」と必死に自分を保とうとした

 

そんな毎日を過ごしている時、いつも聴いている深夜のラジオから流れてきたのがスガシカオサヨナラホームランだった。聴いた瞬間、「あれ、この曲俺が書いたのか?」と思うくらい、サヨナラホームランは当時の僕の状況を歌っていた。

 

 

何も手につかずに 夜の八時 ぼうっと見てるテレビ

"おれ、この先、どうしよう・・・" 誰かが打ったツーランホームラン

みんな笑い抱き合って そのシーンが眩しすぎたんだ

ほんとはぼくだって 誰かを笑顔にしてみたりしたい

ぼくの部屋は今日も カーテンを閉めたまま

このままでいいのか? いいわけないだろう・・・

明日という言葉は どうして明るいって書くんだろう?

明るい日じゃなかったら 誰も明日を待たないからか・・・

"本当のぼくはきっと こんな奴じゃないはずなんです"

そう叫ぶぼくはたぶん 間違いなくそーゆー奴

明日が見えないから カーテンは閉めたまま

とっくに気づいてるよ このままじゃダメなこと

9回裏まさかの 逆転サヨナラホームラン まだゴールじゃないだろ? カーテンあけた夜

君と電話きった後 なんだか涙があふれた 確かな言葉なんて 何一つ君に言えなかった

誰かじゃなくぼくのため 誰かじゃなくて君のため

どこかじゃなくここで いつかじゃなく 今 この時を・・・

何も手につかずに 夜の八時 ぼうっと見てるテレビ

"おれ、この先、どうしよう・・・" 誰かが打ったツーランホームラン

 

曲が終わって、すぐに部屋のカーテンを開けた。窓に映る自分を眺めながら、僕は僕を受け入れようと思った。本当の僕はきっとこういう奴なんだと。そしてカーテンは開けたまま、その日は眠りについた。

 

次の日、窓から差し込む日の光で目が覚めた。髪を黒く染めなおし、SNSは全て消して自分を誰かと比較することはやめた。比較することをやめると、それまでよりも他人に優しく出来るようになった。「なんでもできる」とつけあがっていた傲慢な自分は消えていき、そんな自分を以前よりもずっと好きになっていった。

 

受験の結果は平凡なもので、決してサヨナラホームランと言えるものではなった。けれどその一年で、この一曲で、僕は人を認められる自分になれた。そんな自分を好きでいられる僕になれた。自分は何者か、今やるべきことは何なのか、そんな当たり前のことを気づかせてくれたこの歌は、間違いなく僕の人生を変えてくれた一曲だ。