PUNISUKEのブログ

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正しい街~室見川について

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ももち浜も君も室見川もない」というフレーズを聴くたび思い出す。人生で一番辛かった浪人時代、室見川はいつも僕を癒してくれた。予備校に行くのが辛い時、失恋した時、ブックオフに漫画を買いに行く時、、、いつも側に室見川が流れていた。

 

僕が見ていた室見川の特徴は、海に繋がっているというところ。地下鉄室見駅を降りて橋へと進むと、左手には姪浜へと続く長い河川敷、右手には博多湾が見える。橋はちょうど海に繋がるかどうかというところに架かっていて、夕方くらいに潮が引くと潮干狩りをする人もちらほら見えてくる。僕は潮がまた満ちてくるときその橋を通り、一日の辛いことを海に流すように川を見ながら歩いていた。

 

覚えたてのタバコをよく吸ったのもここだった。川沿いのコンビニで買ったタバコを持って河川敷を降り、川辺で吸ってはむせてを繰り返した。今思えば「今年受験に落ちたらどうなるんだろう」」という焦りから、少しでも大学生との差を縮めたくて背伸びをしていたんだと思う。

 

車もバイクも持っていなかった僕たちは、頻繁に自転車で姪浜へ出かけた。姪浜にはブックオフもモードオフも温泉もバッティングセンターもあって、田舎者の浪人生が遊ぶのには十分だった。距離はかなり遠かったけど、予備校に行くことに比べたら悠々と流れる室見川を横目に河川敷を走るのは楽しかった。

 

僕はその町を出てから、室見川に似た場所を探した。けれどどの川も、どの町も、室見川の代わりにはならなかった。たぶんあの場所は、僕が当時とても苦しい思いをしていた分、ほかの場所より素敵に感じるんだと思う。もしあの場所を超えるようなところがあるなら、それは僕が人生で最も苦しい経験をする場所だろう。そしてそこを素敵に感じるのは、その場所から離れた時だろう。こんな風に考えると、もう室見川みたいな場所は見つからない方がいいのかもしれない。夢は叶わない方が素敵なのと一緒で、室見川みたいな場所はもう見つからない方が、これからも素敵な場所として僕の中で存在し続けるはずだ。室見川はこれからも僕の正しい街として、ずっとそこにあり続けていて欲しい。